3.唇から何かを読み取ろうとしている
わたしたちよりもう一つ上の世代では、笑うときに口元を隠す女性が大半でした。
大口を開けて笑うのははしたない、とか、異性の前では喋るときでさえ口を隠す女性もいました。
平安時代の絵巻物では、貴族は男女問わず必ず扇を持って口元をにかざしています。
現代では、アニメ、漫画など、口の形で主人公の喜怒哀楽をデフォルメして表しています。
顔文字も口の形を変えるだけで気持ちのニュアンスが細かく伝わります。
これらが何を意味しているか、と言うと「唇、口の形、口角は、内面を正直に物語る」ことを、昔の人も現代人も知っているからです。
気持ちを無闇に他人にさらしたくない、さらすことはハシタナイこと、から始まり、口の形は心の形とまで言えるほど、唇は表情の重要なパーツです。
人は、好意を持つ相手のことを知りたい、感じたい、でも目を見るのは恥ずかしい、そんな場合は自然に口元に目線がいきます。
しかもそこは、内心を正直に反映する場所。
胸や瞳ほどじろじろ見ても失礼には当たらない。
そんなに親しくなくても遠慮なく見られる場所にある。
関心がある女性の唇をガン見する男性が多いのは、この辺りに理由があります。
西洋の方々が日本人には奇異に感じられるほどデンタルケアをするのも、口元を顔全体と同じぐらいの比重で捉えているからと思われます。
日本人が「目は口ほどにものを言い」と考えるところを、西洋のかたが「口は口ほどにものを言う」て考えておられるようです。