それぞれのお花には花言葉があります。
気分を明るく元気にしてくれる花言葉もあれば、物悲しい印象の花言葉もあります。
例えば、「切ない」という花言葉は、物悲しい印象のひとつですね。
「切ない」という言葉は、一見ネガティブのように見えますが、一方で、悲しいだけではない奥の深い感情です。
この「切ない」を花言葉とするお花には、どんなものがあるか、また、それにはどのような背景があるのか、見ていきましょう。
切ないを意味する花1:ワスレナグサ
ワスレナグサの花言葉は有名ですね。
あまりお花に興味のない男性でも知っている方は多いのではないでしょうか。
そう「私を忘れないで」です。
この花言葉の由来には、ドイツの若い騎士の伝説があります。
騎士ルドルフには、ベルタという恋人がいます。
ある日、ルドルフとベルタがドナウ川の岸辺を散歩していると、青いキレイな花が咲いているのを見つけます。
ルドルフは、ベルタのためにその青い花を摘もうとするのですが、あやまって川に落ちてしまいます。
川の流れにのまれたルドルフは、自分が流されていくにも拘らず、摘んだ青い花をベルタに投げ、「僕を忘れないで」と叫んで、そのまま流されて死んでしまいます。
遺されたベルタは、生涯この花を身につけて暮らしたそうです。
「私を忘れないで」という気持ちの中に、
「自分はこのまま死んでしまい、もう会うことはできない。どうにもしがたい。でも、自分のことを忘れないでほしい」
そんなルドルフのなんとも切ない最後の感情が表れていますよね。
切ないを意味する花2:月下美人
2つ目は月下美人です。
月下美人の花言葉は、「はかない恋」「はかない美」です。
月下美人は一晩だけしか花を咲かせないことが特徴ですね。
夜にしか咲かないということから、その名前の「月下美人」という名前がついたような印象を持ちますが、実はその名前は昭和天皇のエピソードが由来しています。
昭和天皇が皇太子だった頃、台湾を訪れた際に、月下美人を見てその美しさに目を惹かれそうです。
台湾の駐在大使にその花の名前を聞くと、「月下の美人です」と答えたことから、「月下美人」という名前になったそうです。
英語名も、「A Queen of the Night」と言い、こちらは夜にしか咲かないことに関係した名前のようですね。
夜にしか咲かない、また、1年に1回しか咲かない、さらには、満月や新月の夜にしか咲かないなどの印象を持つ方もいらっしゃると思います。
まさに、月の光のもと、短い時間にあでやかな花を咲かせ、すぐに枯れてしまうというはかなさから、「はかない美」「はかない恋」という花言葉が生まれています。
「はかない」と「切ない」、言葉のニュアンスが微妙に違いますが、月の輝く夜にしか咲かないという月下美人。
もっと咲き続けて、その美しさをもっと長い時間私たちに見せればいいのに、そうではないところになんともいえない切なさがあると思いませんか。
切ないを意味する花3:朝顔
朝顔の花言葉も、「はかない恋」です。
朝顔は、小学校の夏休みの宿題で朝顔の観察日記などをつけた思い出のある方も多いのではないでしょうか。
「はかない」というより、子供のころの夏休みの花という印象があるかもしれませんね。
花の形もラッパ型の丸い可愛らしい形ですし、色も青や紫、薄いピンク系など、色とりどりです。
それなので、一見、「はかない」という言葉とはかけ離れているようにも思えますが、朝咲いた花が午後にはしぼんでしまうという、花が咲く時間が短いことに関係しています。
一方で、朝顔には「固い絆」という花言葉もあるそうです。
これは、朝顔のつるがしっかりと巻きつき、太陽に向かって上へ上へとのびていく様子からつけられたようです。
そのつるはしっかりと支柱に巻きつき、元気良くのびているのだから、花も一生懸命長い時間咲いてほしいもの。
しかし花だけは朝咲くと午後にはしぼんでしまうという、アンバランスなところが余計に切なさをかもし出しています。
切ないを意味する花4:キンセンカ
キンセンカも遊園地や公園などによく咲いているのを見かけ、多くの人に楽しまれているお花ですね。
その色は、オレンジ系、黄色系などのいわゆるビタミンカラーで、この色が、私たちに元気をくれる花といえるでしょう。
そんなキンセンカですが、その花言葉は、「寂しさに耐える」、「悲嘆」、「別れの悲しみ」など、元気の素とはかけ離れた物悲しいものです。
それは、ギリシャ神話に由来しています。
水の精クリティは太陽神アポロンに恋心を抱いていましたが、アポロンにはレウトコエ王女という恋人がいて、クリティの想いは悲しい片思いのままでした。
アポロンを思うあまり、クリティの恋心は、次第にレウトコエ王女への嫉妬や妬みへと変わっていきクリティは王女の父に密告をしてしまいます。
そのことには腹を立てた父は、王女を生き埋めにしてしまうのですが、そのことを知ったクリティは、後悔の念に苦しみます。
一方で、アポロンへの想いは捨てられず、9日間地面に座ったままアポロンを見つめていると、クリティは、黄金のキンセンカへと姿を変えてしまったのです。
黄色やオレンジの元気な花の色からは想像できない悲しい切ない物語ですね。
自分のやってしまったことに悔やみがらも好きな人のことはあきらめきれない、なんともこの切ない感情は、昔も今も変わらないのですね。
切ないを意味する花5:アネモネ
アネモネもその花の色のあざやかさで、私たちに元気をくれる花ですね。
赤やオレンジ、白、ピンク、青や紫など色とりどりの花で私たちを楽しませてくれます。
その花の色だけでなく、八重咲きなど花びらの形態も様々で、見た目もとても可愛らしいですよね。
ガーデニングを楽しんでいる方も多いのではないでしょうか。
しかし、その花言葉は、その元気な可愛らしい姿とは対象的な、「はかない恋」「恋の苦しみ」など、悲しく切ない言葉です。
アネモネの花言葉の由来にもギリシャ神話が背景にあります。
アフロディーテ(美の女神)の話です。
息子のキューピッドと遊んでいたアフロディーテは、キューピッドが放った矢が当たってしまいました。
この矢が当たってしまうと、「当たると最初に見た人間に恋してしまう」と言われており、そのため、アフロディーテは、最初に見た人間の美少年アドニスに恋をしてしまいます。
一方で、アフロディーテにはもともと戦いの神アレスという恋人がいて、彼は、アフロディーテが心変わりしたと勘違いしてしまいます。
そして、その嫉妬心から自らをイノシシの姿に変え、狩りに来た人間のアドニスを襲い、アドニスは死んでしまいます。
アドニスの遺体を見てアフロディーテが流した涙から、アネモネが咲いたそうです。
アネモネの明るい花の色からは想像できない物悲しい神話ですね。
明るくあざやかな花の色と対照的な、悲しい物語が余計に切なさを感じてしまいます。
花言葉で「切ない」を意味する花を知ろう
「切ない」という花言葉をそのまま表したようなお花もあれば、一見元気いっぱいの色の花で「切ない」と言う言葉とは遠いところにあるようなお花もあります。
特に、ギリシャ神話が背景にある、海外からの花には、一見そのあざやかな花の色からは想像できないような悲しい神話があります。
しかし、見た目があざやかな花にも、そうではない花にもその背景には共通して、「切ない気持ち」の物語があります。
そんな背景を知って、それらのお花を見るとそれまでの感情とはまた違った気持ちになるかもしれませんね。